今朝(1月3日)の日経新聞の社説では、『「平成の次へ」政治秩序かえた制度を改修する時』、と題して平成の改革であった、1994年の政治改革法の成立による小選挙区比例代表並立制の導入と、2001年からはじまった省庁再編に伴う内閣主導について、さまざまな問題が出てきており、平成の改革の改良がポスト平成の政治テーマだとして、「選挙制度のゆがみ正せ」、『「強すぎる官邸」を抑止、を訴える』と問題を提起しています。この主張のなかで、「弱すぎる野党」の問題、政権交代可能な二大政党制の課題、国会改革についても言及しています。
日本経済新聞社説の雑な要約ですが、政治改革、小選挙区制、内閣機能の制度についての問題を提起していますが、元日の朝日新聞社説も、政治改革、小選挙区制と内閣主導の体制についての問題を指摘し、必要なバージョンアップを進めていくしかないと述べ、国会についても「弱い国会を強くせよ」と提案しています。
前回に続き社説に見られる政治課題を取り上げましたが、これからの政治について考えるとき、平成の政治改革はまだ終わりではなく正確に民意を反映する選挙制度の再考、内閣制度のありかたや首相の恣意的解散を防ぐための解散権制約の問題、そして国会改革などが重要な課題となるということでしょうか。
今回は、選挙制度について少しばかり。
小選挙区制については、まだ要領よく説明する知識はありませんが、今後の整理の第一歩として、今現在、思いつく程度で整理しておきたいと思います。
1994年に小選挙区制が導入されましたが、政権交代で民主党政権が誕生するまでは、二大政党制誕生を期待する土壌ができつつあるかのような神話があったかもしれません。しかし、民主党政権の未熟さからか、自公政権の復活、そしてその後の選挙を経て、今や自民党一党支配、一強他弱と言われる政治の世界、二大政党制を夢みる夢もみれないか、とも思われる状況です。そのことで政権時の民主党のあり方を批判する見解もあるようです、選挙で敗退する前後から党内事情で分裂を繰り返し、それが小党乱立の原因でもあるなどと。
しかし、我が国においてイギリス、アメリカのような二大政党制が実現するのでしょうか。
二大政党政治がイギリスとアメリカで発展したのは、これらの国の歴史的な条件によるところが大きいといわれています。日本のような対立構造をもたない同質的な社会には、そもそも二大政党制はなじまないという見解もあります。イギリスやアメリカでそうであっても、我が国にあてはめてそうなるとは限らないことは現実を見たとおりです。
二大政党制について話を進めますが、小選挙区制が二大政党制を生みやすいとする説があります。フランスの政治学者モーリス・デュヴェルジェの説です。
「デュヴェルジェの法則」
「政治学の分野において最も信頼できる法則の1つは「デュヴェルジェの法則」である。当初デュヴェルジェ Maurice Duvetgerは2つの仮説を提案した:(1)小選挙区制は、二大政党制を生む;(2)比例代表制は、多数政党制を生む。仮説(1)は再度にわたって確認され、法則といういう位置付けが可能だが、仮説(2)は確認ができなかった。比例代表制は政党の議席率とその政党の得票率をそのまま反映するから小さい政党の設立を可能にするが、別にそれを作り出す機能がない。しかし、小選挙区制では、各政党・候補者が2つの政党に集めることを有利にするから、二大政党制を生む機能が確認されている。(以下、略)」(政治学事典 弘文社 平成12年版)
「デュヴェルジェの法則」は、小選挙区制が二大政党制を促進し、比例代表制は多数政党制を促進するという説ですが、小選挙区制を導入している国において、第三政党が台頭し二大政党制が崩れる、一党優位政党制が存続するなど法則に従わない例が生じ、アメリカの二大政党制のような例はむしろ珍しいと認識されるようになってきているという指摘もあるようです。
小選挙区制の弊害も指摘されています。
死票が多く議席数に反映されないことが、問題視されています。小選挙区制は一選挙区から一人を選ぶ方式のため、ある政党が優勢の選挙区では、他党に投票してもそれは「死票」となり、正確な民意が反映されにくいことです。
そして得票率と議席占有率の乖離の問題もあります。得票率48%で3/4の議席を占有するといった小選挙区制のマジックです。
得票率48%→議席は75% 自民大勝、小選挙区制が後押し 衆院選
2017年10月24日 朝日新聞
朝日新聞が23日午後9時40分現在で集計した結果、自民党は289選挙区で2672万票を獲得し、得票率は48%だったが、議席では75%を占める218議席を獲得した。1議席を争う小選挙区制度では、第1党が得票率に比べて獲得議席数の比率が大きくなる傾向がある。今回も自民党の大勝を後押しした格好だ。(以下は略)
1990年代の政治改革において、小選挙区制度を導入すれば二大政党制が誕生するとさかんに喧伝されていましたが、小選挙区制は大政党に有利であり、一党独占支配を生みやすいという懸念もあり、小選挙区制導入にあたり警戒心をもつ政治家もいたはずです。小選挙区制は、与野党いわば「政治決着」という形で導入された制度だったのではないかと思いますが、やはり、懸念していたことが現実のものとなってきているのかもしれません。
小選挙区制導入から20年以上が経過しています。小選挙区制のあり方または選挙制度の見直しの時期に来ているのでしょうか。
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